飲食業界からお店無しで起業して3年経ちました 1 イタリアン時代その1

     

天狗の鼻をへし折られたイタリアン時代

 卒業した後、特に深い考えもなく飲食業界の居酒屋さんに就職するも
飲食業界のキツさとその時の自分が意識の低さゆえに半年で退職。

 その後、気を取り直しパスタカフェチェーン店で働くこと2年半。
 ありがたいことに、上司や同僚にも恵まれ、それなりに戦力として扱ってもらっていたのですが
その時に
『自分なら料理の世界で生きていける』
と思い込み、新浦安のホテルのイタリアンレストランがオープニングスタッフを募集していたのを見つけて転職。

 そこで自身の勘違いをぼっこぼっこに正していただきました。
 前職ではあんなに動いていた体がまったく動かない。

 理由は簡単で、前職のパスタチェーンではセントラルキッチンシステムで
さらにマニュアルでいつどこでどんな仕事をすればいいか?決められていて
それをいかに上手に反復するか、でした。

 つまり前職の時、瀧澤が有能だから戦力と動けていた、のではなく
瀧澤みたいな大した実力ない人間でも、目の前のことに真面目に取り組みさえすれば仕事ができるようプログラムされたそのカフェチェーン店の仕組みが優秀だったのです。
 
  ここはそういう場所ではありませんでした。

 先輩から
 『考えて動いて』
と言われていましたが
そもそも『考えて動く』の意味を実感としてわかっていませんでした。 

 なので今思うと、入店して暫くは戦力外でした。

このお店での考えて動く、とは

その時のエピソードを1つ
ある時アンティパストミスト(本日の前菜の盛り合わせ)が入った時

『タッキー、やってみろ』

とシェフから言われたことがありました。

 その時は仕込み作業担当でまだ一度も盛り付けをしていない時で
まさか自分にふられると思ってなく
その日のアンティパストミストのメニューが何でどう盛り付けるをまったく把握していませんでした。

戸惑うこと数秒シェフからの

『はい、ダメ―』

の一言

瀧澤の最初の前菜場体験は10秒で終わりました。

『教えてもらっていないことなんて・・・』
その時はそう思いました。

 その心を中を見透かしたかのでしょうか

後ろから先輩がやってきて一言

『さっきシェフがアンティパストミスト作ったの見てなかったろ』

 そう

  ちょっと前にアンティパストミストがオーダーが入って
 シェフが自ら作っていたのです。
 瀧澤はそれを意識して『視て』いませんした。
 それでは『ダメ―』と言われて当然です。

 ちなみに当日は自己嫌悪というかしくじったー、
という罪悪感がグルグルしていて(本当ならそこから前菜の盛り付けを意識して視なければいけないのに)
それを意識できたのはその次の日でした。

 で、次の日その日のアンティパストミストが知らされて
ディナー前にシェフが今日の盛り付けをしました。

 そして次オーダー入った時
『たっきー、やってみろー』
 と声がかかりました。

前菜を頭の中で確認します。
 今日のアンティパストミストは
ワカサギのエスカベッシュと本日の鮮魚のカルパッチョ
ベビーリーフとトレビスのサラダにプロシュートのスライス!

 よし作るぞ、と皿を置いた途端

『はい、ストップー、〇〇代われー』

 え?え?
 なんで?

 戸惑う瀧澤のところの本来の前菜の担当がやってきます。
 2枚のパイディッシュに『カルパッチョ用にスライスされた本日の鮮魚』と『スライスしたプロシュート』
をのせて。

 今度の瀧澤のNGは『最初の一手』

盛り付ける前に『盛り付けるものを準備』し終えて
よどみなく盛り付けるもの』
 しかし『本日の鮮魚のカルパッチョ』はメイン場の方にスライスを頼まなければならない
 プロシュートはスライサーでスライスしなければならない

 瀧澤があのまま前菜を盛りはじめたら途中で
『鮮魚頼まなきゃ』『スライスしないと』
と盛り付ける工程で手がいったん止まることが明白。
つまり『最初の一手』は『皿を置く』ではなく
『プロシュートのスライス』と『メイン場の方へ鮮魚のカルパッチョ用のスライスを頼む』
ことでした。
 それができていないから止められたのでした。

 次の日
前菜の仕事を前日くまなく観察、メモ。
よーし、今日こそ意気込んだ瀧澤に一番最初にかかった声は
『プリモの皿だせー』
でした。
プリモ=プリモピアッツ、イタリアンで言うパスタ

 なーにー!!(゚д゚)!

プリモのことなんも見てない・・・

『はい、たっきー、ダメ―』

もう聞きなれたシェフからのダメだし
前菜場だけが自分の仕事だと思いこんでいた瀧澤の失敗です。

備える、ということの大切さ

 クチーナの仕事は全て、いつ自分にフラれるてもいいよう
『備え続ける』ことがこの仕事場では求められました。
例えば、前菜とパスタ場のレシピをかっちり覚えて備えても
今日のメインのセコンドのコントルノの盛り付けが言われた時にできなければ戦力外扱い。
 一刻も早く、すべてのことに対応できるように『準備する』ことがこの時の課題でした。

 この時に、10準備して10使えることはまずない。
カフェチェーンでは10準備すれば10使えていました。
しかし、メニューも食材も毎日変わるここでは10準備して1使えればいい。
それでも、使えるかもしれないことにも準備しておくこと。
その準備してある量が実力なのだと。
そうでないと、一瞬自分の前を通る『チャンス』を掴むことはできないということを学びました。
チャンスが来ない、と嘆いている人は
チャンスが来てもいい準備ができていないから
チャンスがその人の前を通ってもチャンスだということに気づかないのです。
 
これを適切に表現しているのが
嘘喰いという漫画の13巻で主人公の嘘喰いの勝利を見届けた立会人門倉雄大のセリフです。

これはいつの世も同じに語られる勝者の弁か・・・
チャンス・・・それを掴む者と掴めぬ者の違いは・・・・
備えていたか否か

ただ嘘喰いは備えていただけ・・・
チャンスを生かす手段を
(中略)
備えぬ者には姿形は見えど
決して触れ得ぬ蜃気楼・・・・
(中略)
おそらく嘘喰いは負けていただろう・・・・
掴む備えを1つでも怠っていたならば負けていた
勝つべくした故の結果だ・・・
チャンスとは
それを生かせる者の頭上にのみ乱舞する。

迫 稔雄著 嘘喰い 13巻 P153、154より

 

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